仮想通貨で得た利益は確定申告が必要
以前は仮想通貨に関する法整備が整っていなかったため、仮想通貨は商品として消費税の課税対象でした。
たしかに、仮想通貨は保有目的や取引目的で購入する人も多いのですが、単なる登記商品としてだけではなく決済手段としての性質も持ちます。
そのため従来の制度のままだと仮想通貨を買うときに8%の消費税を支払い、仮想通貨を使って何かを買うときにまた8%の消費税がかかることになってしまうんです。
合計で16%の消費税がかかってしまう計算に。
これでは仮想通貨の普及が滞ってしまうし、決済手段として使う人が増えないですよね?
以前は日本国内で仮想通貨が決済方法として使えるお店は少なかったから問題視されなかったものの、2016年ごろから国内でも仮想通貨取引を行う人が増えてきて取引所もどんどん設立されました。
そんな国内の状態を受け、ついに2017年7月から資金決済法が改正され仮想通貨も金融商品、決済方法として分類されるように。
このニュースは、日本が世界に先駆けて仮想通貨を正式に通貨として認めた!として海外のメディアでも話題になりました。
ただ、日本の政府としてはビットコインを通貨として認めたわけではなく、変動や変化が激しい市場のため細かい分類をするのは困難だったから税率の高い雑所得にした。という見方もあります。
法律が改正されたことにより、仮想通貨を購入するときには消費税を払わなくてよくなり、代わりに取引によって得られた利益は所得税の対象となり確定申告が必要となったのです。
毎月のお給料から所得税が天引きされるようなシステムの場合でも、副業として仮想通貨による利益があれば確定申告が必要になります。
申告が必要なのは年間で利益が20万円を超える場合で、それ以下であれば申告の必要はありません。
そのため、本業のほかに副業で仮想通貨取引をしているが確定申告が面倒な人などは1年間で利益がオーバーしないようにすれば大丈夫です。
ただ、個人で気をつけていてもコインチェックのような大きなトラブルがあると、保有していたコインが急遽日本円で返還される可能性もあるので方法を知っておくといいでしょう。
確定申告の期限
確定申告には期限があり、だいたい毎年3月15日までに管轄の税務署で手続きを行う必要があります。
2019年の確定申告受付期間は2月18日から3月15日までの1ヶ月弱。
初めて行う場合は、書類に不備があっても余裕を持って対応できるように早めに申告するといいでしょう。
遅れてしまうと、延滞税として年利最高14.6%必要になってしまうのでご注意ください。
特に、個人事業主の青色申告の場合は期限までに遅れてしまうと年間控除が受けられない可能性があります。
トレーダーなど個人で行なっている場合は、青色申告で確定申告している人が多いと思うので忘れないように期間内に手続きするようにしましょう。
また、個人で事業を行なっていたり会社を起こしている場合には所得税だけでなく他の税金も申告しなければいけません。
消費税は4月1日まで、予定納税は7月31日(第1期)と12月2日(第2期)までと細かく分けているのでこんがらがってしまいそうですが、お忘れなく。
利益は雑所得に
金融商品の確定申告は色々と分類されています。
たとえばFX取引の場合の場合は「先物取引に係る雑所得等」として定義されています。
仮想通貨の場合は雑所得として区分されているので、それに準じた税率で計算して納税額を算出しなければいけません。
株式で利益を出した場合は、特定口座といって自分で計算しなくてもいい方法もありますが仮想通貨取引はまだ細かく決められていないようですね。
雑所得とは?
そもそも所得税の中には、10個の小さなカテゴリが存在しています。
1.利子所得
公社債や運用信託によって得られた利益のことを指します。
意外なものでは預貯金の利子もこれに当たります。(マイナス金利の現代ではあまり使わないでしょうが)
2.配当所得
株主や、事業への出資者が投資した会社から受けた配当の利益分に課せられる税金です。
3.不動産所得
読んで字のごとく、土地や建物を所有している人が第三者に貸した賃料によって得られた利益に加算されるもの。
船や飛行機などを個人で所有している場合も、誰かに貸してお金を受け取ったらこの不動産所得の対象になります。
4. 事業所得
主に自営業の農業、製造業、サービス関連の事業に課せられます。
自分が行なっている事業であることがポイント。
5.給与所得
こちらも事業によって得られた利益に対して課せられる所得税ですが、事業所得との違いは「自分が雇用されているかどうか」というポイント。
自分がビジネスを立ち上げた側であれば「事業所得」、小規模やベンチャーであっても自分は雇われた側であれば「給与所得」です。
6.退職所得
退職金のように、会社を辞める時などにもらえる一時所得のことを指します。
7. 山林所得
林や山などを売った場合は、この山林所得として分類されます。
山林所得として計上するためには、木を狩られていない必要があります。
もしも譲渡する前に木を伐採して土地利用できるようにした場合ば、この山林所得として判断されません。
8. 譲渡所得
資産を譲渡して売った場合に区分されるのがこの譲渡所得です。
資産というのは主に、株式・不動産・土地・ゴルフの会員権などが対象になります。
生活用品やビジネスに必要な事業用品を第三者に譲渡した場合は、譲渡所得の対象にはあたりません。
9. 一時所得
給与や配当のように持続的なものではなく、なにかを売ったり譲渡したりした対象ではないものがこの一時所得として対処されます。
具体的な例を出すと、競馬や競輪などの払戻金や賞金などがこれに当たります。
10.雑所得
1〜9までの所得税の種類全てに当てはまらない所得区分は全てこの雑所得として判断されます。
仮想通貨取引の利益の他にも、
・税金の還付金の利子(還付加算金)
・公的年金(年間400万円以上の場合)
・お金を貸して利子を得た場合(個人間でのやり取りではなく、金銭の貸し出しを事業にとして行なっている場合は異なる)
・印税や講演料など
仮想通貨のように新しいところだと、インターネット上でアフィリエイトで得た利益や、ネットオークションで得られた利益についても雑所得として分類されます。
仮想通貨は保有しているだけでは、雑所得の対象にはなりません。
ではいつ対象になるのかというと、それは売買取引を行った瞬間なのです。
ビットコインを日本円に変えた瞬間はもちろんのこと、ビットコインをアルトコインに変えた時も課税対象となります。
雑所得の計算方法
雑所得の計算方法は大雑把にいうと「1年間の総合的な収入から必要経費を抜いた額」が税金の対象となります。
1年間の総合的な収入とは、
・仮想通貨取引
・価格差の変化で得られたもの
・マイニングによる新規発行コイン
・配当型トークンの配当分
・エアドロップなどでもらったトークン
などが対象です。
必要経費とは、仮想通貨取引に必要な
・原資
・パソコンの代金
・スマホやタブレットの代金
・インターネット代金
・取引手数料
・仮想通貨取引に関する書籍代
・仮想通貨取引の情報を得るために参加したセミナー
などが当たります。
この利益が年間20万円以下である時は、特に申告の義務はありません。
20万円以上の場合は、課税対象となり申告が義務付けられています。
また雑所得の場合、FXや株取引のように分離課税ではなく総合課税として判断されるので要注意。
総合課税とは
総合課税とは、仮想通貨の利益と給与などほかの取得を合わせた金額で課税されるもの。
給与から所得税を天引きする場合は、年末調整で返還してもらって確定申告するといいでしょう。
税率は年間の利益によって異なり、以下のように変わっていきます。
【195万円以下の場合】
所得税率:5%
控除額:0円
【195万円〜330万円以下】
所得税率: 10%
控除額:97,500円
【330万円〜695万円以下】
所得税率:20%
控除額:427,500円
【695万円〜900万円以下】
所得税率:23%
控除額:636,000円
【900万円〜1,800万円以下】
所得税率:33%
控除額:1,536,000円
【1,800万円〜4,000万円以下】
所得税率:40%
控除額:2,796,000円
【4,000万円〜】
所得税率:45%
控除額:4,796,000円
住民税はどの金額も一律で10%です。
つまり、最高で利益の55%以上が税金で持っていかれる可能性があるということですね。
トレーダーからは「税率が高すぎる。」「分離課税などにした方が仮想通貨投資の普及につながるのでは?」などの意見が出ています。
つい最近、仮想通貨の確定申告が今までより簡単にできるようになるニュースが話題になりましたが、もしかしたら今後制度自体も変わるかもしれませんね。
仮想通貨の確定申告計算方法
仮想通貨の確定申告を行うための計算方法は2種類あります。
どんな内容なのかについて解説していきますね。
移動平均法と総平均法について
計算方法の1つめは移動平均法です。
仮想通貨の取引をするたびに、取引した時点での単価を求めるという方法。
詳しくは後述しますが計算が複雑で面倒なので、自分でいちいち計算するのは時間がかかりすぎてしまいおすすめしません。
仮想通貨と同じくその時点や場所によって価格が変動するガソリンにもしばしば例えられます。
ガソリンスタンドや時期によってリッター当たりの価格は変わるし、前のスタンドで入れたガソリンがまだタンクにある状態で価格の違うスタンドで給油するとリッターあたりの平均価格を出すのに手間がかかりますよね?
仮想通貨の移動平均法もイメージはそれが近いと思います。
次に解説するのは総平均法です。
こちらは1年間に取引した総額から平均を計算で割り出す方法で、移動平均法と比べると計算式はずっと簡単です。
計算式は、取引の年間総額を購入したコインで割るだけ。
個人で計算から確定申告まで行う人におすすめです。
ただ、年末まで計算ができないこと、大雑把な計算方法なので細かい部分で差異が出る可能性があることなどの難点も存在します。
移動平均法による計算方法
さきほども触れた通り、移動平均法の計算方法は少し複雑です。
計算式は、仮想通貨を購入した総額(それ以前に持っていた仮想通貨の購入総額+新たな取引で仮想通貨を購入した金額)で仮想通貨の総量(もともとのコインの総量+新たな取引で得たコインの数)を割るというもの。
この計算を取引の都度行わなければいけないので、結構手間がかかります。
専用のツールソフトなどがあるのでそれを利用するのをおすすめします。
仮想通貨で損をした場合の確定申告
仮想通貨取引をして取引がマイナスだった場合は、まず損益計算をして年間の総合金額を算出しましょう。
利益が20万円以上残った場合は普通に確定申告を行う必要があります。
お給料をもらっている人が20万円以下の利益になった場合は確定申告は必要ありません。
ただ、損失分を他の分野の所得税と相殺することはできません。
仮想通貨取引でマイナスになったとしても、他の所得で得られた利益の税金は安くなったりせずそのまま支払わなければいけないのです。
確定申告の方法
確定申告までの手順は、
1.仮想通貨取引を証明する書類を集める
(取引明細・入出金履歴・ウォレットの残高などが確認できるページを印刷したもの)
※2019年から取引所発行の「年間取引報告書」と、国税庁発行の「仮想通貨の計算書」だけでも、OKになりました。
2.その他必要書類を用意
領収書や源泉徴収票、身分証明書を用意しておきましょう。
3.申告書を作成する
副業として取引している場合は申告書Aを、個人事業主として取引している場合は青色申告を利用
4.手続きを行う
管轄の税務署に行くか、インターネット上で確定申告を行いましょう。
自分以外にまかせる方法
確定申告は計算や手続きなどに手間も時間もかかるのがネック…と感じる人も多いはず。
自分以外にやってもらう方法はあるのでしょうか?
税理士に依頼する
必要書類を渡して税理士さんに依頼する方法です。
仮想通貨の計算方法は複雑で面倒なので、環境的に可能であればこの方法が確実だと思います。
個人事業主や会社として行なっている場合はいいかもしれませんが、依頼にもコストがかかるため個人の副業で取引を行なっている場合は現実的ではないかもしれません。
ソフトを使う
個人で申告する場合には、確定申告用のソフトがおすすめです。
フォーム形式の画面に必要な情報を入力していけば、簡単に確定申告が行えます。
本業があって忙しい人にもおすすめ。
まとめ
今回は仮想通貨の確定申告をテーマに、
- 仮想通貨取引の利益は、確定申告を行う必要がある
- 税率は利益の額によって変わり、計算方法も種類がある
- 個人で行う場合はソフトや計算ツールを有効利用するのがおすすめ
という内容でお届けしました。
もうすぐ受付開始するので、余裕を持って準備しておきましょう。